「許されようとは思いません」芦沢央著
諒一は、恋人の水絵とともに祖母の納骨のために母の故郷に向かう。水絵が結婚を望んでいることは分かっているが、諒一には躊躇してしまう理由があった。亡き祖母は殺人犯だったのだ。事情を知っても水絵の気持ちは変わらなかったが、諒一は結婚に二の足を踏んでしまう。そもそも祖母も祖父と結婚しなければ殺人犯になることはなかったからだ。最寄り駅に到着するが、待ち合わせしていた母が現れない。寂れた駅前にはタクシーもなく、寺に向かうためバスに乗った諒一は、乗客の詮索するような視線を感じ、いたたまれない。(表題作)
その他、仕事上のミスをごまかそうとして次第に窮地に陥る会社員など、ラストのどんでん返しが冴えるミステリー集。
(新潮社 550円+税)