「将軍の子」 佐藤巖太郎著
徳川秀忠の乳母・大姥局の頼みで、武田信玄の娘・見性院が預かったのは、まだ将軍の側室として認められないおしづが産んだ秀忠の息子・幸松丸だった。
やがて、秀忠の正室・お江の使いの老女が、幸松丸を引き取ると告げる。だが、おしづは幸松丸を渡さず、連れて逃げるという。懐妊がわかったとき、正室から、堕胎に用いるホオズキの根が送られてきたからだ。一計を案じた見性院は、老女が幸松丸を引き取りに来たとき、幸松丸は預かったのではなく、自分が養子としてもらい受け、武田を継がせると答える。(表題作)
将軍の子として生まれながら、初代会津藩主となり、名君と称えられた保科正之の半生を描く連作短編時代小説集。
(文藝春秋 1500円+税)