「ビタミンDとケトン食 最強のがん治療」古川健司著
膵臓(すいぞう)がん手術件数日本一の経歴を持つ著者は、がん患者の生活の質(QOL)を改善するための支持療法として、糖質制限を母体とした「免疫栄養ケトン食」を推奨。がん細胞だけを弱らせ、正常細胞を元気にする栄養の組み合わせによる治療を行ってきた。
しかし、がんが縮小した症例は数多いものの、がんの消失までには至らず、方法を模索してきた。本書では、その答えとして著者が導き出した、ビタミンDの効果と、十分な補給によるがんへの作用について解説している。
ビタミンDは、がん治療に関わる重要な働きを持つ。例えばアポトーシスの促進だ。これは“プログラムされた細胞死”のことで、細胞が自滅へと誘導されて新たな細胞へと生まれ変わる仕組みのことだ。
しかし、がん細胞ではアポトーシスの機能が衰え、一気に増殖してしまう。ビタミンDには、がん細胞のアポトーシスを活発にするほか、がん細胞に栄養を送る新しい血管ができるのを抑制する効果なども期待できる。
そして、著者が146人のがん患者に対して調査を行ったところ、全体の90%以上にあたる132人にビタミンDの欠乏が見られたのだという。
ビタミンDは魚類やキノコ類に多く含まれており、厚生労働省が目安とする一般成人の推奨摂取量は1日5・5~10000gμである。
しかし著者は、サプリメントなどで10000gμ以上のビタミンD摂取を行い、ケトン食とあわせて血中のビタミンD濃度を30gn/デシリットル以上にすることで、ステージⅣの乳がんや大腸がん患者の再発を食い止めている。
本書では、脳血管疾患やうつ病などに対するビタミンDの効果も紹介。さまざまな現代病の救世主となるのは、ビタミンDかもしれない。
(光文社 780円+税)