「おやすみ、東京」吉田篤弘著
深夜1時、映画の小道具係のミツキが明日の撮影の準備を終え帰ろうとすると、助監督から監督がリストには載っていない果物の「びわ」も用意して欲しいと言っていると伝えられる。助監督によると、今の季節、東京でびわを入手するのは難しいらしい。
深夜、スーパーを巡るがやはり見つからず、困ったミツキは顔なじみのタクシードライバー・松井に助けを求める。松井の車を貸し切り、乗り込んだミツキに恋人の浩一からメールが届く。新聞配達員でカラスの生態に詳しい浩一によると、ある通りの街路樹がびわの木で、昨日は実がなっていたという。現場に行くと、黒装束の女がびわの木にのぼり、実を収穫していた。(「びわ泥棒」)
深夜の東京で孤独を抱えつつもつながっている人々を描く群像小説。
(角川春樹事務所 740円+税)