「戦神」赤神諒著
大友軍の総大将・戸次親家は、勝てるはずだった明見城の攻防戦で味方の裏切りに遭い、主君大友親治の次男で戸次家の養子になった五郎九郎を失った。主君の怒りはおさまらず、その責を負って妻・お梅の命を差し出すことになったのだが、お梅は身重の身だった。 せめて我が子の顔を見てから死なせてほしいと懇願したものの通らず、お梅は子どもを助けるために自ら腹を切って、子猫ほどの大きさの子の命を救い出す。
鬼の子と呼ばれ、八幡丸と名付けられたその子は、波乱に満ちた人生のスタートから生き延び、立派な武士へと成長していく。
やがて新たな主君となった大友義鑑のもと、戸次鑑連として戦の才能をめきめきと発揮することになるのだが……。
2017年「義と愛と」(「大友二階崩れ」に改題)で第9回日経小説大賞を受賞してデビューした著者の最新作。日本一の武将といわれた戸次鑑連(のちの立花道雪)の過酷な運命と愛の姿が強烈な印象を残す。デビュー作はもちろん、鑑連に仕官した柴田治右衛門を描いた「大友の聖将」やデビュー作の続編「大友落月記」と併せて読むのもお勧め。
(角川春樹事務所 1800円+税)