「菊花の仇討ち」梶よう子著
北町奉行所同心・中根興三郎は妹夫婦の家に向かう途中、ふと一軒の古手屋に吊り下げられている小袖に目を留めた。濃紺の地に籠目模様と珍しい変化朝顔の花が描かれている。変化朝顔を作り続けて15年の興三郎も、これまで見たことのないものだった。朝顔栽培の師匠・留次郎は江戸では見たことがない花だという。店の主人に尋ねても売り主がはっきりしない。
そんなある日、興三郎は店の主人と若い女が、例の小袖のことで口論しているところに出くわす。女は留次郎の娘のおみねの幼馴染みで3年前に家出をしたきり行方不明になっていたお徳だった。興三郎がお徳を問いただすと、小袖を盗み、売ったのだと認めた。
8年ぶりとなる「朝顔同心」最新刊。
(文藝春秋 1600円+税)