「落花狼藉」朝井まかて著
吉原の西田屋の女将、花仍(かよ)は、4、5歳の頃、ひとりで城下をうろついていたところを、遊女屋兼宿屋の甚右衛門に拾われた。長じて甚右衛門の妻となったのだが、当時は関ケ原の戦いの後で血なまぐさい空気が漂っていた。傾城屋にやってくる武士も心身ともにすさみきって、遊女を手慰みに殺す者もいた。甚右衛門は公儀に「傾城町を造りたい」と願い出る。それは売色でしか生きていけない女たちを守るためだと花仍は思った。
まもなく、隅田川沿いの場末を埋め立ててもよいと許可が下りた。甚右衛門はどぶをさらい、護岸工事をして傾城町を造るが、かつて傾城町造りに参加しなかった京者が、吉原に入れてくれと泣きついてきた。
黎明期の吉原に生きた遊女屋の女将の物語。
(双葉社 1600円+税)