「騒がしい楽園」中山七里著
園児への指導力を見込まれ、埼玉県の片田舎から世田谷区の閑静な住宅街の一角に立つ若葉幼稚園に異動してきた教諭の神尾舞子。着任早々、園長から騒音と待機児童問題トラブルがあることを聞かされるが、その日の2時間目、舞子は子供の声がうるさいと抗議にやってきた町内会長と対峙するはめに。さらに翌日には入園希望者向けの授業参観では、どうしても子供を入園させたいと食い下がる久遠友美につかまり辟易(へきえき)する。
そんなある日、舞子が担当する年長クラスの結愛の父親が死亡したとの知らせが入った。それが悲劇のとば口だったかのように、園内の小動物が次々と惨殺される事件が続く。園の方針で舞子は同僚の池波と夜回りをした翌朝、園の正門で結愛の死体が発見された――。
安楽死や臓器移植、いじめなど社会問題をテーマにした作品も多い著者の最新作。今作では幼稚園という子供たちの楽園を舞台に、少子化や待機児童、親同士の確執など、子供絡みのトラブルを各所に忍ばせ物語を展開。無垢(むく)な子供たちと大人たちのエゴの対比が際立つミステリーだ。
(朝日新聞出版 1500円+税)