「インタビューズ」堂場瞬一著
新潟で事件記者をやっていた「俺」は、大学の同期で出版社に就職した本橋に「視野が狭い」と言われ、発奮してある企画を思いつく。それは毎年1回、大晦日に渋谷のスクランブル交差点で取材して、その1年で一番印象的だった事件や出来事を聞くというもの。平成最初の大晦日から始めたその取材は、2019年末で締めくくられ、ついに100人に及ぶインタビュー集となって完成したのだった……。
警察小説やスポーツ小説で人気の著者による、インタビュー形式のノンフィクション。小説家である著者がフィクションに挑戦したのかと思いきや、インタビューの形をとって書かれた作品だということが最後に明かされている。ベルリンの壁崩壊、イカ天、就職氷河期、ウィンドウズ95、冬ソナ、マンション耐震偽装問題等々、平成の時代に起きたさまざまなことが人々の口から語られることで、時の流れの中に埋もれていつのまにか記憶の隅に追いやられてしまった事象が掘り起こされていく。
平成とはいったい何だったのか。さまざまな人の証言をもとに、平成の時代の空気がリアルに伝わってくる。
(河出書房新社 1600円+税)