「魂の痕(きずあと)」梁石日著
主人公は、親の言いつけに従って隣村の朴家の一人息子と結婚した春玉。朴家は裕福な地主の家で、日本人とのつながりもあったことから春玉の父が進めた結婚話だったが、夫はまだ10歳の子どもだった。
嫁いだその日から厳しい姑の監視のもとで家事に明け暮れる羽目になった春玉だが、次第に成長した夫が暴力を使って体を求めてくるようになり、奥から部屋の様子をうかがう姑の面前で陵辱するようになった。拒絶しても何度も体を求められ、さらに姑からもいびられる日々に耐えられなくなった春玉は、ついに親友のいる大阪へと逃げ出すことを思い立つ。
しかしやっとの思いで朴家から逃れて、船旅の末にたどり着いた働き口で出会ったのは、春玉を思うままにしようとする男たち。屈辱の果てに待っていたのは、妊娠と解雇という最悪の状況だった……。
「血と骨」で第11回山本周五郎賞を受賞した著者の最新作。済州島から大阪へと流れ着き、心も体もボロボロに傷つきながらも生き抜いた女の、苦しくもたくましい人生がつづられていく。男に虐げられながら、遠い故郷に思いを馳せる女の切ない思いが胸に迫る。
(河出書房新社 1800円+税)