「政治主導」の正体
「官邸官僚」森功著
「政治主導」の美名のもと、やりたい放題の安倍政権。その陰には実は異色の官僚集団がいた。
保守系メディアの最右翼にして安倍政権批判の急先鋒に立つ。本書はそんな「文藝春秋」の連載をもとにした書き下ろし。「安倍一強体制」と呼ばれる現状をつくり上げた官邸の側近たちの素顔を徹底的に暴いた力作だ。まず「総理の分身」といわれる今井尚哉首席秘書官は経産省出身。民主党政権時代には脱原発派の議員たちと対立し、森友学園問題であきれた答弁をした財務省の佐川元理財局長とは同期に役人になった旧知の仲だ。
「影の総理」といわれる菅官房長官が絶大な信頼を寄せる、「影の総理の影」が和泉洋人首相補佐官。国交省の技官上がりという傍流ながら小泉政権の構造改革で運をつかみ、民主党政権時にも生き残ったばかりか、文科省の縄張りにも幅を利かせ、加計学園問題にも深く関与した。
そして全官庁が震え上がる内閣人事局長が警察庁出身の杉田和博官房副長官。同じ警察官僚出身の北村滋内閣情報官も官邸官僚のひとりだ。彼らを中心にした「安倍一強を支えた側近政治の罪」(副題)の大きさはすさまじい。 (文藝春秋 1600円+税)
「令和日本・再生計画」藤井聡著
著者はテレビでもおなじみの都市工学者。安倍政権で防災・減災を担当した内閣官房参与ながら消費増税に反対して辞任し、話題となった。一般には「国土強靱化計画」だけが知られているが、著者はアベノミクス推進でも参与として声を大にしてきた。
本書ではその内容を自ら解説するだけでなく、官邸、与党、国交省、農水省、防衛省などが連携する中で「財政規律を金科玉条のように掲げる財務省」が消極的として徹底批判。また、議員からマスコミまでが支持する「構造改革」にも異を唱えている。 (小学館 820円+税)
「秘録・自民党政務調査会」田村重信著
自民党政務調査会(政調)は党の政策立案を担当する。この職員は民間組織(政党)でも官僚に等しいわけだ。本書は大物政調室長として知られた「16人の総理に仕えた男」(副題)の回顧録。自民の政権転落時も知り尽くすだけに興味深い話が満載。当時の政調会長・橋本龍太郎との思い出が最も濃く、人柄も手腕も最高という。
逆に湾岸戦争時の「小沢調査会」で仕えた小沢一郎については「ゴマすり上手」「単なる権力欲の塊」とにべもない。憲法改正論の旗振り役だけに定年退職後も影響力は大きそう。若手では小泉進次郎と杉田水脈を大絶賛する。 (講談社 1600円+税)