「国策不捜査『森友事件』の全貌」 籠池泰典+赤澤竜也著/文藝春秋
「日本を大事にしている愛国者をそのように安倍政権が陥れるのなら、この安倍政権は腐ったものです。園長は国のためを思ってやってるんだから、こんな時ほど内閣が切り捨てないで助けてくださったらえんじゃないですか。自分もブタ箱へ入れと言いたいです。安倍首相には本当に失望しました」
これは安倍晋三に手のひら返しをされた籠池泰典の夫人、諄子の卒園式でのあいさつである。
籠池夫妻の「愛国」には異論があるが、安倍と夫人の昭恵がウソにウソを塗り重ねて、遂には近畿財務局の職員、赤木俊夫を自殺に追い込んだ張本人であることは確かだろう。
これには共犯者がいる。まず、大阪府知事だった松井一郎である。自前の土地のなかった森友学園の小学校設立を大阪府が認可しなければ、疑惑は始まらなかった。つまり、自民党と連立を組む公明党はもちろん、維新がこの疑惑の共犯者なのである。
籠池は維新の下地幹郎が思わず口走った次のセリフを引く。
「松井さんがハシゴを外したというんじゃなくて、松井さんはあなたが学校ができるようにハシゴをかけて、ハシゴから落ちたのはあなた自身なんですよ」
また、籠池は森友学園の経営する塚本幼稚園へ講演に来てもらった著名人を列挙する。
桜井よしこ、曽野綾子、百田尚樹、中西輝政らだが、これらの人たちはそれについて何か語る必要があるのではないか。口をつぐんで知らんぷりは許されないだろう。
籠池は安倍に裏切られて、野党の議員とも話すようになった結果、「いかに自分が『産経新聞』と『正論』と『WiLL』が築き上げた世界観のなかに閉じこもって、狭い思考に固執していたか思い知った」と書いている。これには「Hanada」も加えなければならない。これらは「狭い思考に固執」させるということである。
公文書改ざんに関わった者は次々と出世し、赤木の自殺に責任のある中村稔は駐英公使になったことに籠池は怒る。
そして、政権の犬になっている特捜部は要らないと主張する。なくなって困るのはマスコミだけであり、「特捜部は国家による犯罪であるはずの森友事件を、ボクたち夫婦の詐欺事件に矮小化した」と憤激している。
「国民にとって百害あって一利なしの無用の長物」とまで断罪された特捜部は、それにどう応えるのか!
★★★(選者・佐高信)