「暴虎の牙」柚月裕子著
昭和57年、広島北署2課暴力団係の刑事、大上章吾は、賭場で「沖ちゃん」と呼ばれるレイバンのサングラスをした男を見かけた。その男がレイバンをはずしたとき、沖勝三を思い出した。沖勝三は呉原市の暴力団、五十子会の組員だったが、7年前、突然、姿を消した。敵対する尾谷組にバラされたという噂がある。当時、中学生の息子がいた。
「もしかして沖の息子か」と声をかけると、男は足を止め、大上をにらんだ。所轄に戻って、大上はその男が愚連隊「呉寅会」を束ねる沖虎彦だと知る。メンバーは20人を超える勢いで、覚醒剤の密売と盗品売買に手を出し、五十子会と対立していた。両者の抗争をなんとか食い止めねばならない。「孤狼の血」シリーズの完結編。
(KADOKAWA 1800円+税)