「カイタイ新書 何度も『買いたい』仕組みのつくり方」博報堂ヒット習慣メーカーズ著・中川悠編著/秀和システム
インターネットが隆盛の時代、どうすればモノが売れるか、マーケティングの最先端はどうなっているのか? が分かる本である。マーケティング本についてはフィリップ・コトラー、ピーター・ドラッカー、トム・ピーターズらの名著が挙げられる。
こうした書籍のエッセンスに加え、最近の研究結果をまぶし、ネット時代に広告会社・博報堂に所属する著者のグループがクライアントの問題解決に取り組む際の最新の課題&解決抽出法なども網羅した内容となっている。「マズローの欲求5段階説」といった古典的な概念も紹介されており、上記のような本を過去に読んだ方にとっては「今の時代はどうなってるのかな?」ということを網羅できる。
本書の肝は、いかにして「習慣化」をつくるか、ということにある。人口が減少し、長寿化する社会においては、長期にわたっていかにして買ってもらうためのマーケティングをするか、ということだ。「○○感」が重要である、という部分の記述を紹介しよう。
炭酸水が人気なのは「シュワシュワという爽快感」が重要で、ビーズクッションには「ムニムニ感」があり、ポケモンGOやドラクエウォークといった街中でキャラを捕まえるスマホアプリについてもこうだと書く。
〈人気の理由はいくつかありますが、キャラクターを捕まえるときの心地よさが強く影響しています〉
このグッとくる「○○感」を「UXデザイン」と呼ぶ、なども書かれている。
あとは、超大盛りのカップ焼きそばや激辛商品は「限界食」と呼ばれているとも説明。これらは「デブが食欲を満たすためのもの」「舌の感覚がおかしなヤツが食うもの」などと思いがちだが、売れている理由はこう分析される。
〈意外にも暴飲暴食を繰り返す人よりも普段はダイエットでカロリーを制限しているのに、その反動でたまのご褒美として「限界食」を食べている人が多い〉
ここから「あえてジムでハイカロリーのスイーツを販売したり、体重管理アプリでご褒美クーポンを送るなど、新しいビジネスチャンスが見えてきます」という提案もされる。
ここしばらくマーケティング本から離れていた人にとっては新たなる知見を得られるだろう。ただし、多数のクライアントを抱える広告会社勤務の著者の宿命で、具体的商品名を挙げられないため「あ、アレだな」という感覚を持てない人には少しイメージしづらいかもしれない。
★★半(選者・中川淳一郎)