「町を歩いて、縄のれん」太田和彦著
居酒屋探訪の達人が日常の点景をつづったフォトエッセー集。
北陸新幹線で帰京中、車窓に映える立山連峰を眺めながら山登りに夢中だった若き日々を追想。長野県で育ち、少年時代から山に親しんできたが、本格的に取り組み始めたのは35歳の頃だった。フリークライミングに魅了され、42歳のときにはアイガー峰にまで遠征したという。またあるときは、後期高齢者突入を目前にして、ぜいたくできるのも今のうちと出掛けた人形町の老舗寿司屋の帰り道、通りかかった神社で初詣。
しかし、昭和21年生まれは今年「八方ふさがり」と書かれた張り紙を見て愕然とする話や、企業デザイナー時代に手掛けた作品に会いに行く小旅行、そしてこだわりの晩酌の流儀まで。日常のささやかな幸せをつづる。
(集英社 820円+税)