「デパートの可憐さん!」笹森岬著

公開日: 更新日:

 バブル期にはアパレルショップの「カリスマ店員」が大きな話題を呼んだ。有名なカリスマ店員を擁する店は、わずか14坪の店で月商2億円以上売り上げたというから驚き。現在ではさすがにそうした勢いは失せたものの、接客術にたけた店員とそうではない人では売り上げに大きな差があるという。本書は、超ポジティブなアパレルショップのカリスマ店員が主人公だ。

【あらすじ】美澄可憐、28歳。全国に70店舗を展開するレディースとメンズを扱うカジュアルブランド「17ロマンティカ」の南支店のチーフだ。南支店が入っているのは札幌の商業施設、通称「デパート・トリコ」の5階のファッションフロア。社員3人、バイトとパート6人の総勢9人で早番・中番・遅番のシフトを回している。

 可憐は身長187センチ、学生時代には空手をやっており、高校生のときに素手で熊を撃退したという伝説の持ち主。そのごつい体格にきれいな服を身にまとっていることから「ごしゃれ」なカリスマ店員として名を馳せていた。こじらせ新入社員や正社員試験になかなか受からないアルバイトの面倒を見ながらも日々の激務をこなす可憐だが、ある日、幼馴染みの桜と同居することに。絶世の美少女だと思っていた桜が実はイケメン男子とわかって慌てる可憐だが、そのまま同居生活が始まる。そして憧れの本店勤務のチャンスがめぐってくる。

 だがそれにはライバル店との売り上げ競争に勝利しなければならない……。

【読みどころ】マネキンに着せる服の選定、商品のカラーリングによるディスプレー、クレームの処理といったアパレルショップの内側が描かれているが、恋に仕事に全力で立ち向かう可憐の前向きな姿勢に元気づけられる。 <石>

(KADOKAWA 630円+税)

【連載】文庫で読む傑作お仕事小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…