「カレーライス」重松清著
著者の作品の中から国語の教科書に掲載されたり、入試や模試に繰り返し出題される作品を編んだ異色のアンソロジー。
5年生の「わたし」が「たっちゃん」と会ったのは保健室だった。その日、教室の掲示板に張られた「おかあさんの顔」の絵に落書きを見つけたわたしは、担任の細川先生に気づかれるのではないかと心配で、気分が悪くなり、保健室で横になっていたのだ。
本当は保健室なんて来たくなかった。みんながわたしに意地悪することに飽きるまで、いるのかいないのかわからないような子でいたいだけだ。隣のベッドに寝ていたのが1年生のたっちゃんだった。「ヒデおば」と皆に恐れられる保健の先生は何も聞かずに、たっちゃんとわたしにドロップをくれた。(「ドロップスは神さまの涙」)
(新潮社 590円+税)