「銀河鉄道の父」門井慶喜著
宮沢賢治の父親・政次郎の視点から天才の生涯を描いた直木賞受賞作。
岩手県花巻の宮沢家は地元の名士。一度は落ちぶれたが、政次郎の父・喜助が再興し、今は質屋と古着屋を営む。明治29(1896)年、政次郎は古着の買い付けのため滞在中の京都で長男の誕生を知る。20日後に対面した赤ん坊は、叔父によって賢治と命名されていた。その賢そうな顔に目を細める政次郎を、喜助は「質屋には、学問はいらん」と牽制する。小学校で成績が一番だった政次郎も、喜助に許してもらえず進学をあきらめたのだ。
6年後、賢治が赤痢で入院すると、政次郎は世間体も医者の制止も耳に入らず、自ら泊まり込んで看病に励む。
息子の言動に翻弄されながらも我が子への愛を貫いた父を描く感動長編。
(講談社 920円+税)