「とてつもない嘘の世界史」トム・フィリップス著 禰冝田亜希訳

公開日: 更新日:

 至るところに大量の嘘やデマが出回っている。政治情報にせよ、感染症情報にせよ、何が本当で何が嘘なのか、確かめるすべもなく途方に暮れることも多い。しかしこれは、本当に現代特有の現象なのか。本書は、元オンラインメディアの編集ディレクターで、今はフェイスブックが事実検証の審査を行っている非営利団体フル・ファクトで編集者を務める著者が、繰り返してきた嘘の歴史について、さまざまな角度から考察したもの。

 どんな時代にも嘘による「荒らし」は存在し、人は真実よりも根拠のない作り話を拡散し、でたらめを重ねてきた。たとえば、米国建国の礎を築いたベンジャミン・フランクリンは、ほらをふく名手だった。印刷屋時代にはライバルの学友を装い嘘の死亡情報を流して売り上げを伸ばし、政治の道に入ると、先住民が米国独立軍を殺して頭の皮を剥いだというデマを国外に流して講和条約を有利に進めるなど、嘘を狡猾(こうかつ)に使った。嘘に対処するには、検証する労力をいとわないこととする著者は、巻末に参考文献を掲載している。まさかと思ったら、文献原文にあたると唖然とさせられるかも。

(河出書房新社 2300円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動