Go To!紙上で楽しむ海外旅行本特集
「修学旅行は世界一周!」吉田友和著
コロナ禍の中、「GoToトラベル」の掛け声にせき立てられて、恐る恐る国内旅行は動き出したが、さすがに海外旅行のハードルはまだまだ高い。そこで今週は、旅行気分を少しでも味わっていただけるよう、海外紀行エッセーや旅小説を揃えてみた。どれもスケールが大きい旅ばかりで、ハラハラドキドキ、著者と共に旅している気分になれるはず。
◇
高校3年のカケルは、世界一周の修学旅行に出かけるため、タイ行きの飛行機に搭乗する。
オタクのカケルにとって、海外旅行も一人旅も初めての経験だ。通う高校の修学旅行が自主企画で、行き先に悩んでいる時にゲーム上の親友“BOB”に提案され、ついその気になってしまったのだ。
旅の最後には、ニューヨークに住むBOBとのオフ会が待っている。知り合った隣席の彩世も父親の転勤先のアメリカに留学する前に世界一周をする予定だという。旅慣れた彩世のおかげで無事にバンコクのホテルに到着。数日後、カケルは彩世に同行してチェンマイに向かうが、お祭りのさなかで、ホテルの空き室は1室しかなかった。
行く先々で出会った人々に助けられながら各国を巡るカケルの旅を描いた青春旅行小説。
(角川春樹事務所 660円+税)
「深夜特急 1」沢木耕太郎著
80年代に刊行され、バックパッカーのバイブルとなった名著の増補新版。
26歳の「私」は、インド・デリーで無為の日々を過ごしていた。約半年前、仕事や住居を整理して、かき集めた1900ドルを持って日本を飛び出したのだが、旅はまだ始まってもいなかった。地球の大きさを知覚するための手掛かりのようなものを得たいと、デリーからロンドンまでユーラシア大陸を乗り合いバスで旅すると決めて、日本を出てきたのだ。
しかし、手に入れた格安航空券で2カ所にストップオーバーできると分かり、香港にまず立ち寄ってみた。香港では空港で出会った男に紹介された怪しげな安宿を拠点に街を徘徊。息抜きに立ち寄ったマカオではカジノで危うく一文無しになりそうになるなど、バスの旅が始まる前から波乱続きだった。
(新潮社 550円+税)
「世界最悪の鉄道旅行」下川裕治著
ユーラシア大陸の東端から西端まで鉄道にこだわり旅した紀行エッセー。
出発は、サハリン対岸にあるソヴィエツカヤ・ガヴァニ操車場駅。トルコ―アルメニア間を結ぶ国際列車は運行停止中だと承知の上で、見切り発車する。まずは時速40キロにも満たないスピードで3日をかけてウラジオストク駅を目指す。中国では切符どころかマックでコーヒー1杯買うにも死にもの狂い、そしてコーカサスでは先行の貨物列車が爆弾テロに遭遇してUターンを余儀なくされる。延べ19カ国を通過、寝台車の狭いベッドで26晩も過ごしながら、ポルトガルのカスカイス駅にたどり着くまで。トラブル続きで悪態をつきながらも、その後のユーラシア大陸縦断やアジア各国の全路線走破の列車旅の原点となる旅の記録。
(朝日新聞出版 900円+税)
「果てまで走れ! 157カ国、自転車で地球一周15万キロの旅」小口良平著
足かけ8年半、走破距離、訪ねた国の数で歴代日本一となった自転車世界一周の旅の記録。
奨学金を返済するため内定が出た建設会社に就職した著者だが、卒業旅行先のチベットで人々の多種多様な生き方に感動し、自分の人生を変えたいと自転車地球一周旅を決意する。4年かけ資金800万円をつくり、手始めに日本一周の旅へ。1年かけて日本を巡った後、09年に満を持してオーストラリアから旅を始める。
シドニーからアデレードを150日以上かけて走り抜け、最初の難関ともいえる「ウルル(エアーズロック)」に向かう。交通事故や腸チフスでの入院、そして強盗など、次々と起こるアクシデントに見舞われるが、不思議と手を差し伸べてくれる人が現れる。
そんな出会いと旅の感動をつづる。
(河出書房新社 780円+税)
「美しいものを見に行くツアーひとり参加」益田ミリ著
40代になり、なぜか「美しいものを見ておきたい」という気持ちになった著者。それまで本やテレビで見て、憧れていた場所に、ひとりではハードルが高いから、添乗員付きのツアー旅行で出かけた「おひとり様」旅行記。
まずは北欧にオーロラを見に行くことに。選んだのはスウェーデン・ノルウェー・デンマークの3カ国を巡り、オーロラを見るチャンスが5夜連続用意されている6泊8日のツアー。
飛行機を乗り継ぎ、26時間かけてホテルに到着するが、初日は曇りで、オーロラチャンスは残り4夜だけだが、へとへとなので、ちょっとホッとする……。
ほか、ドイツのクリスマスマーケットや、フランスのモンサンミッシェル、リオのカーニバルなどを巡る。ひとり旅のコツをイラストや現地の写真などを添えて案内。
(幻冬舎 590円+税)