「本能寺の変 信長の誤算」井上慶雪著
天正10年6月1日、織田信長は本能寺で茶会を開いた。翌2日の早暁、本能寺にいた織田信長と、妙覚寺にいた嫡男の信忠が何者かに暗殺された。本能寺には桔梗紋の明智の旗印が残されていて、京の町には「日向守様、御謀反!」の情報が飛び交った。
しかし、明智軍が駆けつけたときはすでに本能寺は焼け落ちていたのだ。一介の連歌師にすぎない里村紹巴が妙覚寺にいた誠仁親王を救出したというのも解せない。「日向守様、御謀反!」の情報も実は真の襲撃軍が意図的に流した偽情報ではなかったのか。後に、「ときは今 あめが下知る 五月哉」という光秀の発句を、まるで光秀の謀反宣言であるかのように紹介したのも巧妙な計略がにおう。
公家の日記などの矛盾点を読み解き、「光秀犯人説」を否定し、本能寺の変は秀吉の陰謀だったと説く異色の本。
(祥伝社 1700円+税)