「イダジョ!完結編」史夏ゆみ著
最低6年間の医学生時代を経て医師国家試験に合格すれば医師免許を取得できる。といってもこれですぐさま医者になれるわけではない。その後に研修医としての修業が待ち受けている。2年以上にわたり国の指定を受けた研修病院や大学病院で研修を受けるのが前期研修医。続く後期研修医(専攻医、レジデント)で、専門研修プログラムを受け、専門医を取得することになる。
【あらすじ】本書はシリーズ3作目の完結編。第1作「医大女子」は幼い頃に医者になることを決意した主人公・安月美南の医大での6年間の奮闘ぶりが描かれる。続く「研修医編」は関東北部の山あいにある北関東相互病院(通称キタソー)へ研修医として赴任、そこで出会った消化器外科医の景見との間に子供が生まれるという波乱の日々。
完結編の本書は、出産で1年遅れたがレジデントとしてどの分野に進むかの決断を迫られるところから始まる。パートナーの景見はアメリカの病院で忙しく働いており、娘の結はもうすぐ1歳。専攻を決めかねている美南だが、手術がうまいと評判の消化器外科医の北崎から手術に向いていないと言われたことが頭から離れない。自分の何が悪かったのか、いくら考えても分からない。
一方で新しく入ってきた新人研修医の教育係としてもなかなかうまく指導ができない。手術どころか、果たして自分は医者に向いているのだろうか。子育て、景見との将来、自身の進路と問題は山積。それでも美南は持って生まれた真っすぐな性格でこれらの難関に立ち向かっていく――。
【読みどころ】医大生から研修医までの修業期間を多彩な人物を配しながら描いていくこのシリーズは、新しい医学ドラマとして今後も読み継がれていくだろう。 <石>
(角川春樹事務所 700円+税)