「渡世人伊三郎 上州無情旅」黒崎裕一郎著
甲州都留郡犬目村の百姓総代の次男・清吉が19歳の時、大凶作に見舞われた。年貢軽減が受け入れられなかった父は、近所の村の総代と一揆を企むが、密告で一族全員が殺されてしまう。1人生き残り、家族のあだを晴らした清吉は、以来、伊三郎と名乗り、無宿の渡世人暮らしをしている。
天保8年晩秋、下仁田街道を東に向かって進んでいた伊三郎は、弥吉と名乗る男から声をかけられる。背中の刺青を見て噂に聞く伊三郎だと気がついたという。
伊三郎は前夜、一ノ宮宿で弥吉を捜す浪人たちを見かけていた。弥吉から旅の道連れになってほしいと頼まれた伊三郎だが、面倒にかかわりたくないと断る。しかし、弥吉はつかず離れず伊三郎についてくる。
時代小説の新シリーズの開幕。
(祥伝社 770円)