「異聞浪人記」滝口康彦著

公開日: 更新日:

 井伊直孝の屋敷を年老いた浪人が訪ねてきた。改易された福島正則の元家臣・津雲半四郎と名乗る男は、人生に行き詰まり、武士らしく切腹して果てるために死に場所として当家の玄関先を貸してほしいと言いだす。

 応対した老職の斎藤勘解由は、半年前に訪ねてきた同じ福島家の千々岩求女の名を出すが半四郎の顔色は変わらない。江戸では、食い詰めた浪人が諸大名の屋敷に押しかけ、同じことを言って金をゆする行為が横行していたのだ。

 勘解由は、求女が意に反して死に追い込まれた経緯を語るが、半四郎は本当に切腹するから介錯人を井伊家家臣の沢瀉に頼みたいと言いだす。

 映画「切腹」や「一命」の原作となったこの表題作をはじめ、末端の武士たちの生きざまを描いた傑作時代小説集。

(河出書房新社 870円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動