「小布施・地獄谷殺人事件」梓林太郎著
昭和20年秋、長野県小布施村の家具職人・坪倉夫妻が養子を迎える。名古屋で保護されたその女の子は、6月の空襲で傷を負い、以前の記憶を失っていた。夫妻は13、14歳と思われたその子を七恵と名付けた。
6年後、七恵の縁談が進む中、夫妻の留守中、七恵は家に入り込んできた男に暴行され妊娠し、結婚話は破談に。七恵は反対を押し切って女の子を出産する。幸帆と名付けられた七恵の娘が2歳を迎えるころ、坪倉が携わった酒蔵の建て替え工事が完了。その祝賀会の夜、酒蔵の庭で男の刺殺体が見つかる。被害者は長野市の銘木店の社員・猿畠だった。
そんな中、七恵は小布施の町に流れ着いた画家の古屋敷と出会う。
戦後間もない小布施を舞台に描くヒューマンミステリー。
(光文社 990円)