「日本の川 読み歩き」岡村直樹著
嵐山光三郎や童門冬二は、忍者の本場である伊賀上野出身の俳人、芭蕉は隠密で、「おくのほそ道」の旅は東北各藩の水路調査が目的だったと考えた。芭蕉が仕えた藤堂家は土木工事に秀でていて、芭蕉も江戸の水道工事に携わっていたのだ。水戸の徳川光圀は、芭蕉は柳沢吉保の密偵ではないかと疑っていたし、吉保は逆に芭蕉が光圀の密偵だと疑っていた。芭蕉の旅に同行した弟子の曽良は、実は吉保の密偵だったのだ。(童門冬二著「異聞 おくのほそ道」)
ほかに、空也上人が疫病に苦しむ人々に粥を施した京の河原(梓澤要著「捨ててこそ空也」)、出雲の阿国が念仏踊りを踊った鴨川の四条河原(有吉佐和子著「出雲の阿国」)など、交通の要路であり、芸能の場であり、罪人の処刑場ともなった川をめぐる100冊の時代小説を紹介する。
(天夢人 1760円)