高嶋哲夫(作家)
5月×日 「歴史より学べ」去年と今年ほど、この言葉を噛み締める年はなかった。
コロナに明けコロナに暮れる日々が続いている。頼みはワクチンだが、数、接種方法、人員、接種者の意思確認に至るまでトラブルが続くだろう。
中世、その前からコレラ、ペスト、天然痘、スペイン風邪、パンデミックは何度も起こっている。そのたびに人類はチエを付け、対抗手段を持ってきた。三密を避ける。うがいと手洗いマスクの着用もそうだ。
リチャード・プレストン著「ホット・ゾーン」(高見浩訳 早川書房 1166円)を読み返した。エボラ出血熱を扱った本で、20年以上前、「ペトロバグ」(現在「バクテリア・ハザード」に改題)を書くにあたり読んだものだ。その10年後に「首都感染」を書いた。赤線が引いてあったり、新聞の切り抜きが挟んであったり。かなり、真剣に読んだのだ。その他、ウイルス、バクテリア、感染症関係の本が20冊以上あった。実は、次に書こうと思っているのも、ウイルス関係だ。
5月×日 しかし日本には、コロナが収束しても大きな脅威が複数ある。「首都直下型地震」と「南海トラフ連動地震」だ。被害者数、経済損失はコロナより遥かに大きくなる。さらにもう1つ。ある意味、日本に最後通告を突き付けるものかもしれない。
野地秩嘉著「トヨタ物語」(日経BP社 2530円)、編集者さんが送ってくれた。日本の利点が、負となるかもしれない。あと10年もすると、欧米では、ハイブリッド車を含め、ガソリン車の新車販売が禁止される可能性が高い。つまり、「電気自動車」のみ。これは自動車メーカーだけの問題ではない。自動車産業はピラミッド構造で、関連企業が多い。ただし、対抗策も考えられる。楠田悦子著「60分でわかる! MaaS モビリティ革命」(技術評論社 1210円)だ。
過去に同様な動きがいくつかあった。携帯電話はスマホ。フィルムカメラはデジタルカメラ、スマホにも変わっている。レコードはカセットテープ、CD、今は配信が主流だ。そのたびに、多くの店が消え、産業形態が変わった。
「電気自動車」の小説を脱稿した。小説ではあるが、かなり重要な要素を含んでいると自負している。目先のことに追われ大局を見れてない「コロナ」の二の舞いになりませんように。