「最後の文人 石川淳の世界」田中優子ほか著
難解さをもって知られる孤高の文人・石川淳(1899~1987年)の人生とその作品を解説する文学ガイド。
なぜ今、石川淳なのか。
著者のひとり、山口俊雄氏は、閉塞感に満ちたこの時代が、石川の再発見とその作品の再読を求めているからだという。石川作品を読み解く重要なキーワードは「自由」である。自由を重んじ、なにものにもとらわれないことを優先する“知の旅人”だった石川は、目の前にある不自由・窮屈さに黙っていることができない。ゆえにその作品には不自由への「不服従」、とらわれからの自由を求めずにはいられない者の精神のありようが顕現しているという。
5人の執筆者がそれぞれの視点からそんな作家の世界へと読者をいざなう。
(集英社 968円)