「漱石を知っていますか」阿刀田高著
小説家の目線で国民的文豪の作品を読み解く文学ガイドエッセー。
学者として十分に認められていた漱石が、小説家を志し、試行錯誤を繰り返す中で生まれたのがあの「吾輩は猫である」だった。「吾輩は猫である。名前はまだない」という有名な一行で始まるその物語の概略を紹介。
同作は登場人物がよくしゃべる「饒舌を軸とした小説」だとし、その冗舌はレベルが高く、まことに衒学(げんがく)的で、ちょっと偉そうで、「そこが厭だ」という読者がいてもおかしくないと指摘する。小説の出来栄えを項目別に30点満点中19点と評価。同作で小説の多様性を模索して地下水脈をつくり、次の「坊っちゃん」でその一つの形を示したと説く。
以降、その「坊っちゃん」をはじめ「こころ」など代表作13作品を解題。
(新潮社 750円+税)