「波の上のキネマ」増山実著
俊介は、祖父が兵庫県尼崎市の立花で始めた映画館「波の上のキネマ」を継いだ。しかし、経営は火の車で不動産屋から売却を持ち掛けられている。
かつて尼崎だけで40館近くあった「町の映画館」もシネコンに押され、わずか2館だけ。かつては経費削減のため、フィルムを他の映画館と共有して上映していたこともあったらしい。
しかし、デジタル化の時代、工夫できることはもうない。年内で69年の歴史にピリオドを打つと決めた俊介は、最後になぜ沖縄出身の祖父が尼崎で映画館を開いたのかを調べようと思いつく。
そんな中、閉館を伝える記事をネットで読んだという台湾人の劉という人物から電話がかかってくる。
西表島のジャングルに実在した映画館にヒントを得て描かれた感動作。
(集英社 968円)