夏バテに効く!?食にまつわる本特集
「最終結論『発酵食品』の奇跡」小泉武夫著
365日、どんな人の生活にも欠かせないのが食べること。健康を考えてみたり、偏食を愛してみたり、食への向き合い方を見てみると人それぞれのこだわりが見えてくる。そこで今回は、発酵食品、歴史上に登場する食、飽くなき美味への探求、スーパーで再発見した食、食卓を巡る俳句の、バラエティーに富んだ食の本5冊をご紹介!
目に見えない微生物の生命活動を利用して造られる発酵食品。酒や味噌、漬物やチーズなどが有名だが、世の中にはもっと奇妙な発酵食品が存在する。たとえば、江戸時代に飢饉を乗り切るために生み出された「紙餅」。使い古しの紙を洗って味噌を加えて葛で丸く固めたものを干し、汁の実として食するという代物なのだが、本当に食べられるのか、著者は作って食べる実験をやってのける。
さらに米を噛んで酒を造る「口噛み酒」の表記を古事記に見つけると、蒸した米を学生に3分間噛んでもらい吐き出してためるという実験を遂行。10日後には発酵が進み、ビールのほぼ2倍ともいえる9度というアルコール度数をたたき出す。発酵学者の並々ならぬ情熱と、発酵食品の果てしない可能性を感じさせる書となっている。 (文藝春秋 1870円)
「ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある」パリッコ著
居酒屋で酒を飲むとか、遠方への旅を楽しむといった行為が制限されがちな昨今、日常の中にある楽しみが改めて見直されつつある。酒場ライターである著者は、見慣れた地元スーパーに潜む独特の味わいを旅人のような目で再発見する。
たとえば、各店のオリジナルエコバッグやレシピカードを比較検討してみたり、ご飯のおかずになる駄菓子を探してあらゆる駄菓子をご飯と一緒に食べてみたりするなどの企画を実施。さらには、0・001単位まで測定できるデジタル秤を購入して、あぶらあげ、お麩、大根などが出場する「お汁がしみこむ食材王座決定戦」も開催。結果、ふえるわかめちゃんが約16倍の汁気を吸い込んで優勝することを突き止める。どんな場所でも半径数メートル内で、貪欲に楽しむ著者の発想力に脱帽だ。 (スタンド・ブックス 1870円)
「歴飯ヒストリア」加来耕三監修、北神諒漫画、後藤ひろみレシピ監修
歴史上の人物由来の食のエピソードを漫画で取り上げつつ、その作り方を紹介する本書。
紫式部が好んだイワシの塩焼き、徳川家康の命を奪ったといわれるタイのてんぷら、坂本竜馬が最後に食べるはずだった軍鶏鍋、篤姫を支えた白いんげんの甘煮などのエピソードと共にそのレシピを紹介。
たとえば、無類の麺好きとして知られた水戸光圀は、朱子学を学ぶために招いた朱舜水から学問だけでなく中国式の麺とスープの作り方を習っていたことが漫画で紹介されている。麺のつなぎとしてレンコンの粉を使い、豚肉の塩漬けハムからスープを取り、5種の薬味を用いて作ったという光圀風ラーメンのレシピも掲載。
普段料理をしない人も、ステイホームの今、夏休みの自由研究として試しに作ってみてはいかが。 (つちや書店 1430円)
「グルメ宝島」ラズウェル細木著
うまい食と酒をひたすら求める漫画家が庶民派目線で語る、食の漫画エッセー。
たとえば、夏に欠かせないソーメンを食べる時、麺をつゆに浸すのではなく酒に浸して食べる酒ソーメンという新ジャンルを見つけた著者は、ソーメンはどのアルコールと相性がいいのか、薬味も用意して実験をスタート。ビール、日本酒、焼酎、紹興酒、白ワイン、赤ワイン、ウイスキーの7種類を用意して実際に食べてみた。結果、泡が邪魔するビールや香りがキツイ紹興酒など味や香りの強い酒はソーメンには合わず、一番おいしかったのは焼酎の水割りで食する酒ソーメンだった。
他にも、スパイスとハーブで大変身させる親子丼、カクテルをシロップにした大人のかき氷体験など、好奇心全開で突き進む著者の実験魂に思わず引き込まれる。 (講談社 1430円)
「食卓で読む一句、二句。」夏井いつき、ローゼン千津著
TVの俳句コーナーで人気沸騰中の夏井いつき氏と、その妹で俳人のローゼン千津氏が、食卓をテーマにした俳句を巡って語り尽くす姉妹トーク集。姉妹それぞれの伴侶も登場し、俳句から想起される食卓の風景がにぎやかに語られる。
及川貞の俳句「くず切りや心通へばなほ無口」を取り上げた章では、姉妹はそれぞれの夫婦観について話を始める。くず切りを季語とするこの句に登場するのは間違いなく老夫婦だという夏井氏の指摘に、アメリカ人と結婚したローゼン氏は「心通へばなほ無口」は一生あり得ないと説明。夏井氏は、話さなくても気まずくならない、お酒を飲んだら話が弾む関係がありがたいと話す。
俳句をきっかけに繰り広げられるふたりの食のエピソードに、食欲と家族愛が刺激されそう。 (ワニブックス 1540円)