「偉い人ほどすぐ逃げる」武田砂鉄著
「復興五輪」という言い方が復興の後押しになるかという質問に、東日本大震災の被災者の約6割が「後押しにならない」と答えた。安倍首相は「(福島原発の)状況はアンダーコントロールされている」とホラを吹き、JOCの竹田会長は「皆さんが想像する危険性は東京にない」と東京五輪を招致したが、福島原発の汚染水は100万トンに達し、保管容量の上限に達した。地元の住民は汚染水の海洋への放出を恐れており、この状況と、復興の象徴としてのJヴィレッジからの聖火リレーは相いれない。そうなるとどちらかの印象を薄める必要がある。それは汚染水のほうなのだ。
「偉い人」の言葉の劣化に対する鋭い一撃。
(文藝春秋 1760円)