「超空気支配社会」辻田真佐憲著
政府のコロナ対応には科学的根拠はなく、刺激的なメッセージを発して、何となく危ないぞという空気を醸成することで、国民の行動を変容しようとする企てにすぎないと著者は指摘する。感染者の増加とともにメッセージはさらにインパクト重視で非科学的になり、空気を読むことにたけたポピュリスト首長が跳梁跋扈する。
コロナや五輪をめぐるこうした混乱は、非合理な精神論を振りかざし、本土決戦を呼号した旧日本軍将校の振る舞いを彷彿とさせる。しかし、当時はなかったSNSが今はある。著者はSNSが加わったことで、現代社会は超空気支配社会となり、これまでにない新しい同調圧力、政治と文化芸術が結びついた新しいプロパガンダを生み出しつつあるという。
そんなネット時代の日本を俯瞰した評論集。
(文藝春秋 1012円)