「舞風のごとく」あさのあつこ著
小舞(おまい)6万石の城下町に火災が発生し、城下の半分近くを焼く大火となった。薬も食料も足りないのに、藩の上層部は先例にこだわって迅速な救済策を打ち出せない。
筆頭家老の後嗣である樫井透馬は父の許しを得ぬまま蔵を開け、焼け出された者たちに食料を供給する。透馬の兄、保孝がヤケドを負ったケガ人の治療のために、医師の手配をしたという。樫井家は長男が病没し、次男の保孝も病弱で家を継げない。やむなく町人の娘が産んだ三男の透馬が後嗣となったのだ。ある夜、人々の救済に奔走する透馬を刺客が襲う。辛くも逃れたが、透馬はこの火災は付け火ではないかと疑いを持つ。
小藩の藩政をめぐる騒動を描く時代小説。
(文藝春秋 1925円)