「私が進化生物学者になった理由」長谷川眞理子著
進化生物学者の著者が人生を振り返りながら、自らの研究についても語る自伝エッセー。
母親が病気で、和歌山・紀伊田辺の父方の祖父母の家で過ごした幼少期に生物への興味が開眼。動物が好きで、その生態を研究したいと考えていたが、進学した東大にはその手の学科は存在していなかった。
大学3年のときに野生のニホンザルの調査を始め、論文を仕上げるが、来日したチンパンジー研究の世界的権威から、論文がよりどころとする「動物は種の保存のために行動する」という「群淘汰」の考えが誤りであることが世界では常識になっていることを教えられる。その後の水も電気もないアフリカでの2年に及ぶ調査など、研究者として独自の道を切り開いてきた日々を語る。
(岩波書店 1276円)