「P分署捜査班集結」マウリツィオ・デ・ジョバンニ著 直良和美訳
英、独、仏、北欧に比べて、イタリアのミステリー、警察小説というとあまりイメージがないが、新しいイタリア発の警察小説が登場した。「21世紀の〈87分署〉シリーズ!!」と銘打たれた、シリーズ第1作が本書。
【あらすじ】ナポリでもっとも治安の悪い地区を管轄するピッツォファルコーネ署(P分署)では、ギャングから押収したコカインを担当の4人の刑事が横領し密売するという不祥事を起こし、署長も責任を取って辞職。県警本部はP署を閉鎖することも検討したが、新署長を招聘し、各分署から人員を補充し存続することを決定した。
しかし、集められたのはいずれも各分署で問題を起こしたお荷物的存在ばかり。ロヤコーノ警部は「クロコダイル事件」で名をあげた腕利きだが、マフィアに情報を流したとの真偽不明の噂が立ち、疎まれていた。ロマーノ巡査長は短気で、激高すると自制心を失い暴力沙汰を起こす。ディ・ナルド巡査長補は前任の分署で発砲して騒ぎを起こしていた。若手のアラゴーナ1等巡査はあるお偉方の縁戚で、乱暴な運転で持て余されていた。この新任4人に加え、古株の副署長ピザネッリ、コンピューターが得意なカラブレーゼ副巡査部長、それら6人を統括するパルマ署長という、総勢7人でP分署は新たにスタートすることに。
最初に舞い込んできたのは、高級住宅街に住む女性の殺人事件。容疑者は公証人の夫。その一方でのぞきを趣味とする老婆の通報で、ある女性が監禁されているのではないかとの疑いが浮上する。
【読みどころ】2つの事件が並行していくが、シリーズ第1作の本書は、合間合間にメンバーたちの履歴を紹介していく。まだ序章といった感じだが、今後の展開が楽しみだ。 <石>
(東京創元社 1100円)