「インディオの聖像」立花隆著 佐々木芳郎撮影
1986年、カンヌ映画祭でグランプリを取った映画「ミッション」の試写を見て、立花はイエズス会がつくった南米の伝道村に関心を持った。カメラマンとともにブラジル、パラグアイ、アルゼンチンの伝道村の遺跡を訪ねた。
特にパラグアイのトリニダには壮大な教会堂や聖像が残っている。それはヨーロッパのレプリカではなく、音楽と彫刻に優れた才能を持つグアラニ族の独自の表現が見られる。彩色されたイエス像はおびただしく血を流し、聖母子像が多いヨーロッパと異なり、父子像が多い。これらは「中南米バロック」と呼ばれている。
なぜ中南米の人びとは伝統的な宗教を捨てて、キリスト教に帰依したのかを宗教美術を通して探る。
(文藝春秋 2970円)