いつか月旅行に行く日のために 宇宙を知る本
「超絵解本 宇宙のはじまり」ニュートン編集部編著
来年には民間人を対象とした月旅行ツアーが行われるそうだ。身近になったとはいえ、宇宙は未知の世界。宇宙を知れば知るほど、世界観が変わるともいわれる。そこで、今週は宇宙研究の最前線から、宇宙旅行のガイドブックまで、宇宙関連の本を集めてみた。
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かつては多くの科学者が、宇宙は永久不変だと固く信じていたという。それを覆したのがアメリカの天文学者ハッブルだ。ハッブルは、天の川銀河の外にも銀河が存在することを観測で明らかにした。しかも遠くの銀河ほど、距離に比例して遠くへ遠ざかっており、宇宙空間全体が膨張していることを突き止めた。
1940年代になると、物理学者のガモフが、太陽が生まれるはるか前、宇宙全体は水素が満ちて超高温・超高密度で、その時に起きた核融合反応で大量のヘリウムが合成されたと提唱。現在のビッグバン宇宙論だ。80年代になると、宇宙は生まれた直後にすさまじい速度で巨大化したと唱えるインフレーション理論が登場する。
しかし現在の標準的な物理学では、宇宙誕生から(10のマイナス43乗)秒間の間に何がおきたのかはまだ解明できていないという。
最先端の物理学が描く宇宙のはじまりに迫る。
(ニュートンプレス 1480円)
「太陽系の謎を解く」NHK『コズミックフロント』制作班 緑慎也著
宇宙科学をテーマにしたBSの人気テレビ番組の中から、太陽系の回を選りすぐり書籍化。まずは、今から40年以上も前に打ち上げられ、太陽系の惑星や衛星を初めて撮影したアメリカの探査機ボイジャーの開発秘話とその功績について。ボイジャーの計画が立ち上がったのは1960年代。NASAでアルバイトをしていた大学院生が発表したリポートがきっかけだったという。
その他、惑星は太陽から遠ざかるにつれて大きくなるのに火星の質量が地球の10分の1なのはなぜか、太陽からもっとも離れた海王星が現在の位置で生まれたとすれば、この大きさになるには太陽系の46億年よりもはるかに長い100億年かかるはず、といった長年天文学者を悩ませてきた3つの謎にすべて関わっていると思われる木星を巡る新説など。最新の探知見から各惑星の知られざる顔を紹介する。
(新潮社 1760円)
「スマホで楽しむ星座入門」アストロアーツ制作
夜空を彩る星座がいくつあるかご存じだろうか。
星座は、約5000年前のメソポタミア地方ではじまったという。季節によって出ている星が変わることに気づいたメソポタミアの人々は、星を結んで畑や農具の形などに見立て、季節の目安にして農業に役立てたという。
王に仕える神官も、星の動きから未来を占えると信じ、太陽や惑星の通り道にある星を選んで目印のための星座を作った。
2世紀には、天文学者のプトレマイオスがそれまで各地で作られた星座を整理して48個にまとめた。しかし、その後も新しい星座が次々と設定され星空が混乱。20世紀の初めに天文学者の話し合いにより星座を統一して世界共通のものにすることになり、88星座にまとめられた。
ということで、冒頭の質問の答えは88座。
本書は、古代メソポタミアで生まれた最古の星座の1つである「しし座」をはじめ、全88星座の見どころや起源、神話を解説するビジュアルムック。添付されたQRコードをスマホで読み取ると、アプリと連動して実際の夜空の星座にナビゲートもしてくれる。
(KADOKAWA 2948円)
「夜、寝る前に読みたい宇宙の話」野田祥代著
行き詰まったとき緊急避難的に心だけ宇宙に飛び出すことを著者は勧める。大きさも時間の流れもけた違いの「宇宙からの視点」は人を癒やしたり何かしらの生きるヒントをくれるからだ。そんな「宇宙からの視点」を手に入れられるように、宇宙について教えてくれる入門書。
草原に寝そべって夜空を見上げ、宇宙の暗闇をただよう自分を想像。宇宙から見た地球や8つの惑星を従えた太陽系、さらに太陽のように自ら輝く恒星が1000億~2000億個も集まる銀河系について説明しながら、私たちが「地球人で、太陽系人で、銀河系人」であることを伝える。
また、地球ではあたりまえの水や空気、生命が「あたりまえではない」こと。そして地球の公転について解説しながら、地球に生まれてくるということは同時代のものたちと一緒に太陽の周りを旅する回数をもらってきたといえるなど。優しい語り口で基礎知識を伝えながら、宇宙からの視点を持つ大切さと必要性を説く。
(草思社 1540円)
「僕たちはいつ宇宙に行けるのか」山崎直子、竹内薫著
去年は、旅行で宇宙に行った民間人の数が、宇宙機関が宇宙に送り出した宇宙飛行士を上回ったという。本書は、もはや「かなわない夢」ではなくなった宇宙旅行のガイドブック。
とはいっても、従来型の宇宙船に乗って国際宇宙ステーション(ISS)で何日間か過ごす本格的な宇宙旅行では1人当たり何十億もの費用がかかる。NASAの決めたISSの滞在費用は、1泊約300万円だという。一方、弾道飛行用のスペースプレーンなどで高度100キロ付近に数分間滞在し、無重力体験をしたあと帰還する「サブオービタル(準軌道)宇宙飛行」なら料金は2000万円前後。
将来的にはサブオービタル飛行は1人100万円くらいかそれ以下になると予測されているそうだ。
こうした現在の宇宙旅行の情報から、ISSでの実際の生活や、宇宙ホテル計画、宇宙に行ったときに起きる体の変化など。宇宙がより身近に感じられる情報が満載。
(青春出版社 1485円)