「竹本義太夫伝ハル、色」岡本貴也著
大坂天満橋の西町奉行所に百姓の五郎兵衛がやってきた。病で寝たきりの奉行の娘に、自分が見てきた歌舞伎の話をするためだ。
初夏に起きた大風災で畑の作物がダメになったため、五郎兵衛は瓦屋の人夫として西町奉行所の瓦ふきをしたのだが、仕事の合間の五郎兵衛の話が面白いと、奉行の娘に聞かせるよう頼まれたのだ。五郎兵衛はいつか浄瑠璃太夫のように、大勢を前に語ってみたいと思っていた。
五郎兵衛が畑で仕事をしていると、崖の上から料亭の主人、理兵衛が弟子に浄瑠璃を教える声が聞こえてきた。いつしか五郎兵衛は三味線に合わせて歌うようになる。ある日、崖の上から拍手が聞こえて……。
人形浄瑠璃に革命を起こした男の一代記。 (幻冬舎 1760円)