「見えない轍(わだち)」鏑木蓮著
心療内科医の本宮が、京都で開業したクリニックに女子高生の春来が母親に連れられ来院する。母親によると数日間、食事を取っていないという。2人だけで話を聞くと、春来が4日前の夕刊の切り抜きを差し出す。
記事は、前日にスーパーのアルバイト店員・由那の不審死体が発見されたというもので、警察は自殺とみているようだ。春来は、由那とは通学途中の電車の窓越しに顔を合わせるだけで話したこともないという。由那はいつも線路わきで電車を見ていたらしい。
事件当日、あることで悩んでいた春来は由那からガッツポーズで励まされたという。そんな由那が自殺するはずはないと春来は断言する。本宮は治療の一環として事件について調べ始める。
江戸川乱歩賞受賞作家による渾身(こんしん)のミステリー。
(潮出版社 880円)