「筆のみが知る」近藤史恵著
料理屋「しの田」のひとり娘、真阿(まあ)は12のとき、胸を病んでいるから部屋から出てはいけないといわれた。ある日、父と母の口論から、2階の座敷に絵師の火狂(かきょう)が居候することを知る。女中の話では、力士のように白くて大きい男らしい。
人形浄瑠璃のように、自分と心中してくれる人かもしれない。店が忙しい夕方に、真阿がこっそり2階に上がってみると、火狂に見つかってしまった。火狂は人を怖がらせる絵を描いているという。絵が描き上がったと聞いて見に行くと、それは女が蚊帳の中に手を入れて誰かに触れている絵だった。(「座敷小町」)
少女と絵師が幽霊の引き起こす事件を解き明かす連作ミステリー。 (KADOKAWA 1705円)