「刑事に向かない女 違反捜査」山邑圭著
英国のミステリー作家、P・D・ジェイムズの「女には向かない職業」(1972年)は、コーデリア・グレイという22歳の私立探偵が活躍する、女性私立探偵ものの先駆けである。「女には向かない職業」とは私立探偵のこと。その伝でいけば、刑事という職業も「女には向かない」となるところだが、21世紀に入った現在、職業のジェンダーギャップを容認するのは時代錯誤。本書は、そこを逆転しての命名なのだろう。
【あらすじ】椎名真帆は東京・荻窪東署の刑事課強行犯係の刑事。大学卒業後、制服姿で定時に帰れる警察行政職員を目指していたのだが、採用試験を間違えて警察官に。交番勤務に就いたがその優秀さを買われ、刑事課に配属されてしまった。自分では刑事に向いてないと思いつつも、担当した殺人事件で成果を上げて、周囲は真帆の能力を評価しているようだ。
そこへ殺人事件の一報が入る。被害者は専門学校に通う21歳の女性。絞殺と思われる遺体から左耳が切り取られていた。
真帆の相方として組まれたのは、大森湾岸署から出向してきた新人刑事の村田。年下で刑事としてのキャリアも真帆より短いのに、階級は巡査部長で格上。おまけに真帆を呼び捨てにするなど明らかに上から目線で、厄介な性格の持ち主。理想のコンビとはほど遠いが、真帆の独自の勘と村田のこの事件に対する並々ならぬ思い入れが本部とは筋の違う容疑者に向けられていく。そうするうちに第2の事件が起き、こちらも片耳を切り取られていた……。
【読みどころ】事件が進むにつれ、村田の異様な情熱の原因が明らかになり、真帆の凄惨な過去ともシンクロしていく。全3作シリーズの第2作。
<石>
(KADOKAWA 704円)