「脳科学捜査官」真田夏希 鳴神響一著
プロファイリングという言葉が日本で一般的に知られるようになったのは、トマス・ハリスの「羊たちの沈黙」(1988年)からだろう。FBIの訓練生であるクラリス・スターリングに獄中にいる精神科医ハンニバル・レクターがプロファイリングの技術を施し、連続殺人事件を解決するというもの。本書も主人公の心理分析官による連続爆弾魔のプロファイリングが物語の軸になっている。
【あらすじ】真田夏希は神奈川県警で初めて心理分析官の職種で採用された特別捜査官。筑波大学大学院で神経科学の博士号を取得。精神科医、臨床心理士を経て神奈川県警に採用され、現在は科捜研に配属される。
30歳を過ぎて婚活を始め、知人の紹介で横浜のレストランで相手の男性と食事をしていた。警官と知られると引かれてしまうので隠していたのだが、近所で爆発が起こり、捜査に当たっていた同僚に声を掛けられて、バレてしまう。
翌日、爆発事件のあった高島署に捜査本部が設置され、刑事部長から夏希も捜査本部に参加して犯人像のプロファイリングをするよう命令が下った。犯人は狡猾で、捜査本部をあざ笑うように次々と爆破を予告し実行していく。状況を打開すべく、夏希たちはSNSで犯人との接触を図り、犯人と夏希との熾烈な心理戦が繰り広げられていく──。
【読みどころ】初の現場で戸惑う夏希だが、ひょんなことから犬嫌いの夏希の相棒となる警察犬のアリシアや、融通が利かないながらも頼りになる所轄のベテラン刑事など、周囲のバックアップを得て、犯人に迫っていく。男性とデートしているときも、つい相手の性格を探ろうと心理テストを仕掛けてしまう彼女の恋の行方も気になるところ。 <石>
(KADOKAWA 748円)