「75歳、交通誘導員」柏耕一著
著者はかつて出版編集プロダクションを経営していた。経営は順調で数々のベストセラーも手がけたのに、50歳を過ぎた頃、競馬にはまり、大金をつぎ込んで、会社の銀行口座を税務署に差し押さえられる羽目に。会社を清算したときは65歳。高齢者なので就ける仕事は清掃員、介護補助、警備員くらいしかないが、自己破産者は警備員にはなれない。交通誘導員になるしかなかった。
どう見ても3人は必要なのに、経費節約のため1人でガス工事現場の仕事をさせられたときは、ろくに休憩も取れず、トイレにも行けなかった。食事もパンを立ち食いしただけだ。
野放図な生活で突然、人生が変わってしまった男の泣き笑いの日々。
(河出書房新社 1452円)