「ONE LIFE ミーガン・ラピノー自伝」ミーガン・ラピノー著 栗木さつき訳
女子プロサッカー界のスーパースター、ミーガン・ラピノーの戦いの場は、ピッチの上だけではない。性差別をはじめとする社会の不平等に抗議の声を上げ続けている。おかしいと思うことには堂々と意見を述べ、行動を起こす。時に大バッシングを受けるが、めげない。何ものにも束縛されず、自分に正直に生きている。
ミーガンは1985年、米国カリフォルニア州北部の田舎町で生まれた。小さいときから運動神経抜群、髪を短く切って男の子みたいな服しか着なかった。6歳のとき、少年サッカーチームに入った。どんな男の子にも負けなかった。
思春期になると、自分に違和感を持つようになった。ボーイフレンドとデートを重ねても、何も起きない。混乱したミーガンは、ますますスポーツに熱中し、サッカー人生を歩み始める。
ポートランド大学の女子サッカーチームで、チームメートのひとりに恋をした。同性愛者である自分を発見し、ふいに全てが腑に落ちた。
ワールドカップやオリンピックに出場するスター選手になったミーガンは、自分が同性愛者であることを雑誌でカミングアウトし、講演などで同性愛者の権利について話し始めた。そして男女の賃金格差や人種差別問題も発言するようになった。
「一人のアスリートが政治的な訴えを広めたければ、まずは勝つしかない」
2019年の女子W杯フランス大会で優勝し、得点王となったミーガンは帰国後、注目の的になった。このスポットライトを最大限に生かして発言の場を広げた。勝者の言葉には力がある。耳を傾けてくれる人が増えて、少しずつ何かが変わり始めた。
ミーガンは語る。
「ただ腕を大きく広げて、誰にも束縛されない自分のスペースを勝ちとればいいのだ」
あなたもできるよ! とミーガンに背中を押された気分で、元気が出てくる。
(海と月社 1760円)