「草の根のファシズム」吉見義明著

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 満州事変開始と同時に、戦争報道に誘導されるように国民の間に戦争支持の熱狂的な動きが広がった。しかし、この熱狂は一時的なもので、大正デモクラシーの延長線上にある民衆的なデモクラシーを求める意識が人々の中から消えることはなかった。この意識は、天皇制を前提とする権威主義的な性格や、日本の「帝国」意識の表れであるアジア・モンロー主義の傾向もあわせもつ天皇制デモクラシー意識ともいえる。

 しかし、日中戦争を経て、やがてそうした国民の間に、日本が盟主となって遅れたアジアを開放するというアジア・モンロー主義に支えられた意識が頭をもたげ、天皇制ファシズムが民衆の意識を覆う時代となる。

 満州事変から戦後までのこうした民衆の意識の変遷を個人の手紙や戦争体験記など膨大な資料から読み解く歴史テキスト。

(岩波書店 1628円)

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