「江戸の旅行の裏事情」安藤優一郎著
江戸時代は、観光旅行が庶民にも身近となった最初の時代で、元禄年間には一大旅行ブームが起きたという。ブームのきっかけは寺社参詣で、旅行に必要な「往来手形」も、寺社参詣が理由なら発給がされやすかった。参詣帰りの精進落としには、遊女屋での遊興も含まれ、参詣が遊興を楽しむための方便にもなっていた。宝永2(1705)年に伊勢神宮を参宮(お伊勢参り)した人は2カ月足らずで362万人にも上る。また意外にも女性のグループ旅行も多く、消費行動で旅行市場に貢献。
一方、大名の参勤交代も莫大な金を街道や宿場に落とし内需拡大に貢献したが、宿泊料のダンピングや備品の破壊など、宿泊先でのトラブルが続出したという。そんな江戸っ子たちの旅行ブームの舞台裏を紹介する面白歴史テキスト。
(朝日新聞出版 891円)