「事件は終わった」降田天著
地下鉄の車内で迷彩柄のダウンジャケットを着た青年が、マタニティーマークをつけたバッグを持った女性にナイフで切りつけた。非常ボタンを押す高校生、逃げようとする会社員。混乱と恐怖のなかで、トレンチコートを着た老人がナイフの青年につかみかかって殺された。
負傷者は出たが女性は助かった。その地下鉄に乗り合わせた和宏は、屈強な若い男だったために逃げ出したことをSNSで非難された。そのうえ、アパートにいるとき、水道管を水が流れるような轟音や、絞り出すような女の声が聞こえるようになる。──助けて。(「音」)
無差別殺傷事件の現場に居合わせた人たちを不可解な出来事が襲う戦慄のミステリー。
(集英社 1980円)