「AIアテナの犯罪捜査 警察庁情報通信企画課〈アテナプロジェクト〉」 越尾圭著
最近のテレビのドキュメンタリーなどでは、ドローンの画像が多用されるようになり、これまでにはない映像を見ることができるようになった。一方で、ドローンによる事故や犯罪も起きていて、昨年12月5日からドローン免許の国家資格制度が始まった。本書の発端もドローンによる殺人事件だ。
【あらすじ】非番で新宿に買い物に来ていた警視庁捜査1課の十勝鉄郎は、爆発音を耳にする。上空を見ると新宿中央公園あたりに黒煙が上がっている。すぐに駆けつけると、ドローンによる爆発で男1人が死亡。現場には声明文入りのカプセルが残されていた。
これはAIの意思で起こされた事件であり、現在警察庁で進められている捜査に特化したAI開発を阻止するために起こされたもので、次の殺人も予告されていた。事実、警察庁では捜査AI「アテナ」による「アテナプロジェクト」を発足していたが、まだ極秘で一部の人間しか知らない。どこから漏れたのか。
ともあれ次の事件を阻止すべく、十勝はプロジェクトのリーダー穂積警視と組んで捜査に当たることになった。被害者には15歳で殺人を犯したという過去があった。警視庁や警察庁が保持している過去の犯罪履歴や捜査資料をすべて学習しているアテナは、声明文と被害者の履歴などから犯人のプロファイリングをしていくが、その矢先に次の爆発事件が発生する……。
【読みどころ】リーダーの穂積は、連続殺人犯に両親を殺されるという被害者遺族であり、そうした犯罪を抑止するためにAI捜査の開発に心血を注いでいた。一方の十勝は、アテナの能力に目を見張りながらも足で稼ぐという昔流儀の捜査を進めていく。機械VS人間という古典的なテーマを現代風にアレンジした新規な警察小説。 〈石〉
(宝島社 800円)