「歴メシ!決定版」遠藤雅司著
「歴メシ!決定版」遠藤雅司著
歴史に埋もれてしまった料理「歴メシ」を文献をもとに再現する食紀行。
例えば、古代メソポタミア文明(紀元前3000~紀元前400年ごろ)を生きた人々はどのような料理を食べていたのか。
彼らは3度の食事をビールとともに楽しむほどのビール好きだったという。ビールは庶民にも広まり、居酒屋文化まであったそうだ。
そんなエピソードとともに「古代小麦とラム肉のシチュー」など、古代バビロニア時代の粘土板に記された当時の料理5品を再現。そのひとつ「アカル」は、常食として食べられていたパン。大麦をひいた粉、小麦粉、古代小麦のエンマー小麦の粉をブレンドし、ビールを加えた生地をオーブンで焼き上げる。ベーグルのようなしっかりとした食感がクセになるという。
古代ギリシャ(紀元前800~紀元400年ごろ)の人々は、あのソクラテスが「食べるために生きている」と評するほど宴会と美食を好んだ。
だが、当時の美食の都の名を冠した「トロネ風サメのステーキ」などとともに紹介される「メラス・ゾーモス(スパルタ風ブラックスープ)」は、美食とはかけ離れた料理。
豚の血と肉、酢で作る黒スープで、その味は「うんざりする」ものだという。その理由は、スパルタ人兵士を理想の戦士に仕立てるため、平和のときはこのスープを飲ませ、戦時においしい料理を食べさせたのだ。
各料理のレシピも添付。「メラス・ゾーモス」の場合は、おいしく味わうために豚の血の代わりにブラッドソーセージを使うなど現代的にアレンジして味わいのあるスープに仕立てている。
以降、19世紀後半まで、12の時代の各5品、計60品の歴メシを紹介する。
クレオパトラやマリー・アントワネットらも食べたであろう料理で歴史を「味わう」好企画。 (晶文社 2200円)